HISTORY
第二話
奥華子って言うんだ、あの子、、。
でもなんだかやたらエコーが多い変なサウンドだ、、。
やけに素人っぽい歌とエコーが第一印象。
で、「自由のカメ」と「月光」というタイトルは憶えている。
「ただ、今は?」と言うとやっぱし「素人っぽい歌とエコー」な事には変わらないのがおかしい、、(笑)
最初っからその気も無かったのでマネージャーのM君に会っても送られてきたCD-Rの件に関しては何ごとも無かったようにお互い触れなかった。
こういう事はよく有る世界、それがまかり通る業界なのである。
そしてそのまま普通に終われば何ごとも無かったはずなのにどうしても奥華子という文字を目にする機会が増えてしまった。
何かと言うと、スタジオの鍵を預けている守衛さんの所にある入退室の記録簿だ、「退12:55奥華子 入12:58福田」みたいな、、。
「ああ~っ?さっき女の子が出ていったばっかしだよ~?」
という守衛さんの声を何回聞いたことか、、(笑)
奥華子は定期的にスタジオに通い、一人でピアノと歌の練習をしていたらしい、、。
何もわざわざここ迄来なくたって、家で練習してればいいのに、、まっ「事務所に通う!」ってだけでプロになったって思えて嬉しいもんかも、、と勝手に思ってはいた、、(笑)
一度たりとも、どちらかが遅く、どちらかが早い、と言うことが無かったことは今思うと不思議だ。
ある日プロデューサーのNさんから電話が掛かってきた。
「あっ、福田君?、うちに奥華子って新人がいるんだけど、、」
「ええ、知ってます、、(記録簿で)、、」
「えっ、知ってるんだ?じゃあちょうど良かった、、今メジャーに持って行くプレゼン用の曲の録音してるんだけどMIXだけお願いできる??」
「あっ、はい大丈夫です、、、」
これが初めて奥華子との仕事。
2002年の6月だった。