HISTORY
第一話
初めて出会った、というか見たのは2001年の終わりの頃だったと思う。
エンジニアの仕事で出かけたSスタジオでの出来事だった。
少し早めに着いたので前の仕事を覗いてみるとそこには
S社のマネージャーのM君がコンソールの前で渋い顔をしながら四苦八苦していた。
M君とは以前から高橋洋子さんやLyricoの仕事で一緒だった顔なじみだ。
レコーディング機器の細かいところまでは知らないM君はほっとした顔で叫んだ。
「ああっ~、福田さんちょうどいいところに来た~!」「どうしたの?」
「ん~、なんか声が変なんですよ?ぜんぜんこっちに来ないんですよ?」
「マイク裏っ返しにでも立てたんじゃないの~、、笑」「どれどれ?」
ヴォーカルブースに入って見るとそこには誰か女性がいたような気がしたが
なぜか記憶に残って無い。
「やっぱそうじゃん、、駄目だよ~反対向けたら、、」
「あああ、、すすいません、、」
「これでよし、で、何やってるのM君、オーディション??」
「いや、うちの事務所で見つけてきた新人なんですよ、デモテープ作ってるんです」
「紹介します、、この方はエンジニアの福田さんです、、」
「あっ、初めまして○○○と申します、、」
何と言ったか記憶にない、、しかし、地味な風貌で目がちっちゃい、、
「弾き語り?」「はいそうです、、」なんかこっちまで暗くなってきそうな雰囲気をかもし出してる、昔の山崎ハコみたいなんだろう、、。
どっちにしろ、いろんな意味で興味が沸かない感じ、自分には関係無いだろう、と思ったのでただただニコニコして
「ん~そうなんだ、頑張ってくださいね、、」「はい、、」と中身の薄い会話で締めくくった。
その後、コントロールルームの中でしばらく歌を聴いてたが、何歌ってたかは今だに記憶にはない。
帰り際、M君が言った「福田さん、今度この子のプロデュースしませんか?」
「ええ~?、ん、いいねぇ、、」「今度デモテープまとめて送りますよ、、」
その子と歌には何も興味は沸かなかったがプロデュースという言葉にはちょっと興味はあった。お互い業界ノリの、ただ口だけが動いている挨拶でその場を去った。
数日後、本当にCD-Rに焼かれたデモテープが送られて来た。
奥華子と書いてあった、、。