HISTORY

第三話

「楔」「境界線」「春風」この3曲のアコースティクギターとピアノと歌の録音と
MIX(TDとも言い、いろんな楽器のレベルを整えたり音を変えたりエコーをつけたりしたものを2チャンネルにまとめて録音し、一般のCDプレーヤーで聞けるようにするための大本を作る作業)をやった。
初めて奥華子の歌を録音した時の印象は「まるで花岡幸代だ!、しかも同じハナちゃんって呼ばれてた!
歌はこっちの方が下手だけど、、」だった(笑)
花岡幸代というアーチストは10年前に僕が録音したアーティストでギター1本での弾き語り系アーチストだった。
鼻声っほい所もかなり似てる、、だからハナちゃんなのか、、?(笑)
(後日解った事だが、当時奥華子のライブでよく付いてくれたPAのエンジニアは、そのまた昔、花岡幸代のレコーディングで僕のアシスタントをしてくれてた人だった。「やっぱし何かあるのかも?」とかなりの偶然に驚いた。)
アレンジャーは3曲とも宇多田ヒカルの「Automatic」で有名な西平さんだった。
「うあ~凄い、メジャープレゼン音源が西平さんか~凄いよ!」と言った事を覚えている。
さすが業界では有名なS社だ、お金はいくらでもあった、、。
当時はそんな事ばかり考えていた、いったい誰の録音をするんだったっけ?ってな感じでね(笑)
スタジオで録音した音のデータはそのまま家に持ち帰り、家のコンピューターでMIX作業をした。
さすがに西平さんのアレンジはかっこ良かったし音も良かった。
出来上がった3曲の中での一押しは「楔」で、プロデューサーのN氏も売り込み意欲満々、マネージャーを含めスタッフの売り込み体制も満々となった。
以後、興味を持ってくれたメーカーはソニー、東芝、avexだった、何人もの方々がライブを見に来てくれた。
しかし、、残念ながら結果はどこも手を上げてはくれなかったのであった。
メジャーからCDを出すということは色んな要素が折り合わなければ契約までたどり着かないのが現状で、それは曲、詩、サウンド以外の部分、権利の問題とか見た目とかメーカスタッフの個人的趣味とか、、。
奥華子も例外では無かった。
そして、当時の僕個人の印象はというと
「決まらなくて当たり前、どう聞いても曲や声の印象よりも西平さんしか感じないし、歌が弱い。そして音程が全部少しづつ低いし、残るのは”お金がなくちゃ何もできないんだ~”のワンフレーズのみ、アイドル系でもないし、ん~~、、」だった。
世間話をするでもなく、ただただしょせん他人事のレコーディング仕事だった、、。
後で聞いた話だが、その時の音源の「楔」と「春風」は一度だけコミュニティーFMで流れたらしい、、